スメラルドの花言葉

防弾少年団に転がりついたアラサー。

<更新中>花様年華 THE NOTES_Love yourself承Her "ver.O" ジョングク*日本語訳


O:

ジョングク<16 JULY YEAR 22>
窓際に立ち、イヤホンをつけたふりで少しずつ追いかけて歌った。すでに一週間になる。もう歌詞を見なくても一緒に歌うことができた。片方のイヤホンを外し、自分の声を聴きながら練習をした。歌詞がきれいで好きなんだと言ったけれど、まさにその歌詞が照れくさくて頭を掻いた。
大きな窓に7月の日差しがいっぱいに差し込んだ。風が吹いているのか、緑の葉っぱたちが少しずつ揺れながらきらめいて、そのたびに僕の顔に降り注ぐ日差しの感触も変わった。目を閉じた。閉じた視界のなかに広がる、黄色くて赤くて、青い色彩を見ながら歌を歌った。歌詞のせいなのか、日差しのせいなのか。胸の中でなにかが膨らんできて、くすぐったくて、少し痛かった。


ジョングク<25 JUNE YEAR 20>
ピアノの鍵盤を手でなぞると埃がべたりとついた。指先に力を込めるとヒョンが弾いていたのとは違う音が鳴った。ヒョンが学校に来なくなって10日が過ぎた。今日は退学になったのだという噂を聞いた。ナムジュニヒョンやホソギヒョンは何も言ってはくれなくて、僕はなにかが怖くて聞くこともできなかった。2週間前、あの日。先生がアジトの教室のドアを開けて入ってきたとき、ここには僕とヒョンしかいなかった。参観日だった。教室に居たくなくて、あてもなくアジトに向かった。ヒョンは振り返ることもなくずっとピアノを弾いていて、僕は本棚を2つ並べて寝ているように目を閉じていた。ヒョンとピアノは一見して異質でもあったけれど、切り離しては考えられないほどひとつでもあった。ヒョンのピアノを聞けば、どうしてか泣きたくなった。

 

涙が流れそうで背を向けると、ドアが壊れるように開けられてピアノの音がぴたりと止まった。僕は頬を叩かれて後ずさり結局転んでしまった。うずくまり、暴言に耐えていると、急にその声が止んだ。顔を上げると、ヒョンが先生の肩を押し引いて僕の前を塞ぐように立っていた。ヒョンの肩越しに、先生の呆れたような表情が見えた。


ピアノの鍵盤を叩いてみた。ヒョンが弾いていた曲を真似てみた。ヒョンは本当に退学にされたんだろうか。もう一度戻ってはこないんだろうか。何回殴られても何度振られてもその程度はヒョンにとってありふれたことだと言った。もし僕がいなかったら、ヒョンは先生に歯向かうこともなかったのだろうか。もし僕がいなかったら、ヒョンはまだここでピアノを弾いていたんだろうか。