スメラルドの花言葉

防弾少年団に転がりついたアラサー。

花様年華 THE NOTES_LY轉Tear : ジミン*日本語訳

Y:

4 July YEAR 22
気がついたとき、僕は皮膚がはがれるほどに腕を洗っていた。手がぶるぶると震え息が上がった。腕をつたい血が流れた。鏡のなかの目は血走っていた。少し前のことが断片的に浮かんできた。

瞬間的に、集中力が乱れた。ダンスクラスのヌナと息を合わせて踊るダンスだったのに、動線がもつれてぶつかった。荒い床に転び倒れて腕から血が流れた。その瞬間、草花樹木園で起きたことが浮かんできた。克服したと思っていたことだった。けれど違かった。逃げなければならなかった。洗い流さなければいけなかった。顔を背けなければと思った。鏡のなかの僕は変わらず、雨の中を転がるように逃げた8歳の子供だった。そしてふと思い浮かんだ。ヌナも一緒に転んだのに。

練習室には誰もいなかった。少し開いたドア越しに激しく雨が降っていた。少し遠くにホソギヒョンが走っていくのが見えた。雨にすべて打たれていた。傘を持って飛び出した。走った。結局、立ち止まった。

僕ができることはなかった。僕なんかがしてあげられることなんて、転んで怪我をさせることや、そうしておいて自分が怪我をしたことにぶるぶる震えて投げ出すこと、後から追いかけて立ち止まることが全てだった。踵を返した。歩みを進めるたびにスニーカーに雨水がはねた。車のヘッドライトが過ぎていった。平気じゃなかった。違う、平気だった。痛くなかった。この程度、傷でもなかった。本当に、僕は大丈夫だった。

 


19 May YEAR 22

結局、草花樹木園へと行かなければならなかった。その場所であったことが思い出せないという嘘はもう終わりにしなければいけない。病院に隠れ生きていることも、発作を起こすことももう全て終わりにしなければいけなかった。それならば、あの場所へ行ってみなければと思った。そんな気持ちで僕は何日めかにこの停留所を見つけた。けれど、草花樹木園行きのシャトルバスには乗ることができなかった。

ユンギヒョンが隣に来てどっかりと座ったのは、今日だけで3台を見送った後だった。どうしたのかという問いにヒョンは、やることもなく退屈で、と答えた。そしてお前はどうしてここに座っているんだ、と聞いた。僕は俯き、靴のかかとで地面をこつこつ叩いた。自分がどうしてこんな風に座っているのか考えた。勇気がないからだった。もう大丈夫だというフリ、何かをもう知っているようなフリ、その程度は軽く飛び越えられるというフリをしたかったけれど、本当はこわかった。何と出会うのか、それに耐えることができるのか、また発作が起こるんじゃないか、全てがこわかった。

ユンギヒョンはのんびりして見えた。この世に急ぐことなどないというように天気が良いと言い、意味もない話をした。その話を聞いて、本当に天気が良いことに気がついた。とても緊張するあまり周囲を見る余裕がなかった。空はとても青かった。何度か暖かい風も吹いた。少し離れたところに草花樹木園行きのシャトルバスが来ていた。バスが止まり、ドアが開いた。運転手のおじさんが僕を見た。衝動的に尋ねた。

「ヒョン。一緒に行ってくれますか?」